なぜ若手作家は消えてゆくのか

高校生の時から美術の世界を眺め始めて
自分もその中の人になってみると、
色々なドラマを目撃して来ました。
その中で、美術のストーリーから脱落してゆく(脱落という言い方には語弊があるかもしれないけど)作家を幾人も見て来たわけです。
彼らは確かに、若手アーティストとして輝いていて
そして、心から憧れたけど、生き残ることができたのはほんの一握りで
いくつかの段階を経て、みんないなくなってしまいまして。

今話しているのは、大学なんかを卒業した後に作家として活躍していた人たちです。
彼らが目に見える場所からいなくなる段階とはどんなだったのか。
自分の長期活動を考えた時に、彼らが身をもって示してくれた教訓を生かす必要があると考えたのです。

一体何が起こっていたのか。

それは、、

作品が売れなくなってしまう

第一に表舞台からいなくなる理由は、売れなくなることです。
長期的な付き合いのあるギャラリーだって、売れない作家とそれ以上の付き合いを続けてゆくことはできません。


売れなくなる理由は複雑で、人の心の中にあるので一概に言うことができないのですが、
僕もいちコレクターの目線として、興味を失ってしまうタイミングがいつなのか考えてみると。

一作品で満足してしまう
不思議なことに、作品を購入して、さらに追加で買いたいと思える作家と
そうで無い作家がいます。

価格が見合わなくなる
ある一定の年齢になると、価格が上がったり
キャリアによって価格が上がると、ある段階で値ごろ感が失われる感じがあって、
それが購入の妨げになることは多いです。

作品がマンネリ化する
ここは難しいのですが、作風と展開の中でとめどなく揺れ続けるのが
作家でもあります。つまり、自分の作風を築いて、そして人気をはくすけど、
そこに一生閉じこもっていることはできません。
一貫した作品の印象が貫かれていても、変わり続けなければならないけど、
からを破ることができなくなってくる。

若くなくなる
これはどこの世界でも言えることだと思うのですが、
若さが武器になる部分はあります。
「若い人を応援したい」と言う、気持ちを持ったコレクターさんはたしかにいて、
作品が良いことは前提だけど、「若さ」に対する支援として購入してくれる人もいます。
だけど、若さは有限だから、ある段階でコレクターが自分より年下という状況に移行する必要があります。
その段階がうまくいかないと、生き残ることができません。


美術は人間のストーリーなので
割り切ることができない部分が多いけど、
一貫した信念が無く走り続けるには、作家人生は明らかに長いのです。
上に記した、作家が突破しなければならない壁を超えてゆく答えを自分なりに出してゆき、
同じ時代を生きる蒔絵の現在を強力に世界に向けて発信し続けること、
それが自分にはできると思えるんです。
1度目の答え合わせは僕が40代になった時でしょう。