伝統漆芸展に入選しました!

第35回日本伝統漆芸展に新作
青貝棗が入選しました!

内心不安だったんです。だって、小さい作品だったから「今回は落ちるかも」という気持ちも少しだけありました。
今回は入選ハガキが届く前にネットで確認することができたので、入落通知が届くまでのドキドキ期間も短くすみました。

さて、この青貝棗ですが、実は僕の作品の中で最も時間とお金がかかった作品であります。
なぜ?と思われるでしょうが、この作品は去年の年末から制作(加飾)をスタートさせていました。
では、なぜそれほど時間がかかってしまったかというと、ランダムな小さい貝のかけらを貼っていく作業が
とても非効率で単純作業なのだけど、技術的な熟練度に合わせた効率がはかれないのです。

指の爪くらいの大きさの面積の作業が8時間とか平気でかかって来ました。
で、それに作業をスタートした段階では気づかなかったのです。
数日作業してみて
「これは、、、、まずいな」と気がつきました。
そこで、個展に間に合わせるために夜勤スタッフをお願いして、完成を目指すかという危険な賭けに出ようかと考えたほどでした。
でもやめた。
さすがに体調を崩してしまいそうだから、長期的な取り組みとして、この作品に挑戦することにしたのです。

幸いなことに、蓋と身に分かれているので、同時に二人が作業できることが後々助かりました。
最終的に、実際に貼る作業を手伝ってくれたスタッフは3人、貝のパーツの加工の手伝いを含めるとさらに3人
そして僕。
多くの人の手伝いのおかげで完成した思い出深い作品となりました。
青い棗、全面に貝が貼ってある。というと黒田辰秋の耀貝の茶器をイメージされると思いますが、
僕の頭の中にも当然そのイメージがあります。で、そのイメージに近いものをなぜ今作らなければならないのか?
という葛藤もありました。でも蒔絵的なアプローチとしての青い立体を作りたいと考えたのです。

とにかく、この作品完成してよかったです。
このアプローチは次にも繋がるし、何より、愚直に漆に向き合うという宣言のようなものです。
棗