勘違い

未来へ向かってゆくために、ちょっとした勘違いは大切です。
僕が漆芸作家という聞いた事もないような芸術分野へ挑戦しようと決意したのは、
まぎれもなく勘違いがあったからです。

僕は高校一年生15歳の時に漆に出会いました。
その時の恩師、小原貢先生の言葉から僕の壮大な勘違いがはじまりました。

2015-10-30 02.23.37

当時の僕は学級委員や寮長などをする一見優等生タイプでしたが、
いつも騒がしい、目立ちたがりで落ち着きのない生徒だったと思います。
特に寮生活では、もっとも騒がしい部屋に属しており、宿直の先生(学校の先生が交代で宿直を努めます)
の好き嫌いが激しかったと思います。


しかし、漆の授業はとても楽しくて、夢中になって制作していました。
あまりに一生懸命漆に取り組んでいるので、いつしか担当の小原先生は
「君は作家になりなさい」というようになっていました。
職人ではなく作家であるというのが、小原先生のこだわりで
とにかく、芸術表現だけでやってみよという事を何度も言われました。

極めつけは
「君は学校はじまって以来の逸材だ」という褒め言葉。
吉備高原は新しくて、僕は9期生。工芸コースは不人気コースだったため、学年で2〜3人しか選ばないので、
はじまって以来といっても20人くらいの卒業生しか輩出していないと思います。
だけど、僕は有頂天でした。
「ひょっとしたら道が開けるかもしれない」と勘違いをしました。
当時所属していた野球部を辞めて、放課後は無理矢理工芸室を開けてもらって作業に明け暮れました。


思い返してみたら、ほんの些細な勘違いから僕の夢はスタートしています。
絵が好きだったのも、小学校に入る前から近所の友達にドラゴンボールの絵を描いてみせていた事が自信になっていたんです。
はっきり言って勘違いです。
世界には僕より上手い人はたくさんいたかもしれません。きっといたはず。
ただ僕は他の人と二つだけ違う部分があったかもしれません。

まず、勘違いし続けた事。
そして、世界で一番蒔絵が好きな男であるという自信をもち続けている事。


勘違いでもいいんです。信じていたら諦める事はないですから。
どんな挫折も困難も、勘違いし続けているから全く感じていないのも同然です。

根拠のない勘違いだって、10年以上毎日休まずに続けていれば、
いつしか多くの人に助けられて、
愛情を持って植栽した漆の木は育っていて、
仕事を手伝ってくれる人が現れます。

高校時代にもった「世界的な芸術家になる!漆で!」という夢は、
現実との距離なんてものともせずに、勘違いだけで突っ走っているように思えます。

自分自身がこんなに幸せで、たくさんの人に幸せになってもらえるんだから、勘違いってのも悪くはない。