弟子制度の思うこと その2

前回記事の続き 

炎上ツイートをきっかけに現代の弟子について考えてみたわけですが、
伝統工芸をつないでゆきたい気持ちも
お給料無しで働かせるなんて!と炎上させたツイートも気持ちはわかります。

僕としては
仮に漆の弟子を取ると考えた時
はっきり言って、ゼロから教えるのはきつい。
プロの現場で、手取り足とり教えるのは、利益を生まないので
最低でも専門学校や大学で基礎を学んだ状態で門を叩いてもらう必要があります。
もしくは、漆教室みたいなところに通いながら、本当に初歩的な作業を時給を渡してして上達を図るとか。
(実際問題として、初めて漆に触れる人にお給料を払うのは相当きつい)

ちなみに、三年前から僕は工房体制で制作してきましたが
時給計算で手伝ってくれたスタッフ(経験者)にはお礼を渡していました。
蒔絵の前段階までチームで行い、蒔絵を僕が行えるので加飾に集中することができました。
ただ、技術面に個人差があるので、短期的な手伝いや不規則なシフトだと赤字になることもありました。

根本的な問題として、携わる産業が成り立っている必要があります。
だって、弟子を取るのも自分が制作を続けるのも作ったものが流通しなければなりません。
弟子制度がきっちりしていた頃というのは、
その産業が成り立っており、一人前になって暖簾分けしてもらえれば
ある程度生活ができるの見込みがあったわけです。

現在の工芸分野だとなかなか厳しいくて
結果として、個人作家が増えて、工房体制が減ってしまった。
つまり、時代に合わせて、学びの場が工房から学校に移ったのです。
中規模の工房生産は淘汰されて、大規模生産か個人生産でしか生き残るのが難しい時代になっていて
実践的に人を育てるのは厳しさを増すばかり。

今後の展開としては、
漆の産業だけで見てみると、
例えば蒔絵に使う筆制作に関して大企業の手が差し伸べられています。
個人生産だった蒔絵筆が
大手筆メーカーや化粧筆メーカーの協力のもと、蒔絵筆の特徴を踏まえつつ
入手しやすい材料での筆制作が進められております。
このようなケースは一見、個人の製作者を見捨ているように感じるかもしれませんが、
後継者がいない分野では技術保存に企業が参入するのは、ありがたいことだと思います。
現状としては、代々の職人さんが作ってきた道具をメインに使いながら、新しい道具も試しています。

さて、このように企業と伝統という観点から見てみると
西陣織を着物として捉えるのではなく
「最高級のシルクの織物」と捉えると用途は爆発的に増えます。
大きな規模の繊維会社のシルク部門のような形で伝統技法が残ってゆくのが
これからのあり方のような気がします。

ツイッター炎上というなんとも言えない事態になった
西陣織の弟子問題ですが、窮状を企業が認識して対策を取ってくれるなら
それは意味があったと言えます。
時代の変化に合わせながら、大切なものが残ってゆかなければならない一例ですね。