本当にそれ漆で塗る必要あるの?

最近は伝統とか工芸というキーワードが
以前に比べて認知されてきたように思います。
それは、僕が漆をはじめてから今までの間に随分と風当たりが良くなったというか
完全無視の状態から脱しつつあるように思えるし、
これは、先生方や、先輩のおかげがあってのことです。

しかし、この追い風に
懸念していることもあります。
話題性のために、作らなくても良いものまで作っているのではないか。
簡単に言えば、
「それを漆で作る必要あるの?」
「それに漆塗る必要ある?」というものが増えているように思います。

確かに、一時的にメディアに取り上げられるかもしれません。
しかし、それで何が起こるのでしょうか。
「認知が広がる」と言われるかもしれませんが、
一般化しすぎた認知の先にあるものは
価格競争ではないですか?

今だって100円ショップに漆(漆が使われてなくても漆表記OKだから、本当は漆じゃないけど)が売られてて
「もっといい漆器を買ってほしいなー」と思ってるのに
どこまで認知を広げたら良いのでしょうか。

話題を作るのはそんなに難しいことではありません。
本当に漆や蒔絵の良さを理解して「あなたからこの作品を買いたい」と言ってもらうことの方が
何倍も難しいし、大切なことのように思います。


漆は優秀な塗料であり接着剤です
使いこなすことができれば、あらゆる造形制作が可能な優れた天然素材です。
しかし、弱点もあるので
しっかりとした技術と知識を持って
適材適所に使う必要があります。

漆は何にでも塗って付加価値が上がるものでもありません。
弱点として、紫外線に弱かったり、
塗装工程が多く高額になります。
無理に使うと評価が下がってしまいます。

もう一度「これに漆を塗る必要があるのだろうか?」
と、問いかけて、大切な漆文化の未来に必要なものが一つでも多く生まれてほしいと思います。