漆塗りゃ価値上がる!というのは間違い

たまに打診される「〇〇に漆塗ったらプレミアついて人気になるんじゃないですか?」
僕はこういうの100パーセント断るようにしていて、
理由は、お互いの価値を落としてしまうからです。

何故こういう企画が上がって、そして失敗してしまうかというと
高級路線にないものを、無理に高級にしようとするからなんです。
例えば、高級な軽自動車って絶対売れませんよね。
同じ自動車でも超高級な車っていうのもあります。
自由な高速移動パッケージとしての車を考えた時に、
軽自動車は100万円なのに1億円を超えるスーパーカーが存在しているのはどうにもおかしな話です。
ただ、前者は移動パッケージとしての用途ですが、
後者の場合、まったく違うコンセプトで作られていて、移動パッケージではない部分に価値があるのです。

さて、コンセプトという目線で漆を眺めてみると何が見えてくるでしょう。
まず、食器としての漆。
建築や神具などの建造物に用いられる漆。
そしてアートとしての漆。
大きく分けても、漆の用途っていくつかあります。
そして、その中にもまったく違ったコンセプトがあります。
例えば、同じ食器でも100円ショップで売られている漆器と書かれたものと
高級料亭で使われる漆器はまったく違うものです。
同じ食の器でも一方は什器としての用途としての価値ですが、
一方は場を演出するに価値があります。

話を戻すと、失敗するコラボレーションとは
多くの場合、物と物の足し算で価値を産もうとしています。
つまり軽自動車に漆塗るみたいな、用途と用途を合わせて価値を産もうという試みです。
用途を満たすために存在するものに必要以上な付加価値を加えると、高くて売れないものになってしまいます。

一方で高級なものというのは必ず心の動きがセットになっています。
その物を手に入れた後の感情が大切なんです。
例えば、時計に漆みたいな企画がありますが、
時計というのは典型的なに対する価値観なので
プレミアモデルとして企画されて、大きな失敗をしていない印象です。

ただ、成功事例を紐解いても
実際に新しい企画を立ち上げて成功させるのは、すっごく難しいんです。