難しい漆芸作品の撮影

ちょっと考えてみて下さい。
黒くて艶のある立体を自分が映り込まないで写す困難を。
自分だけではなく、天井の蛍光灯やその他部屋にあるもの全てを写し込む漆黒。

漆の作品を完璧に撮影しようと思うと、かなり手の込んだセットを組む必要があります。

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ライトをあてながら、そのライトを写り込ませないようにするテクニックも必要です。
一般的にブツ取りのプロと言われている人でも、漆芸作品はかなり苦労します。

個展作品の写真取りのため今日は池袋のスタジオへ行ってきました。
撮影を依頼するのはアローアートワークス
アローアートワークスは漆芸を中心に工芸分野の撮影に特化したスタジオです。
過去、僕からしたらスーパースターのような先生方の作品を撮影してきました。
東京国立博物館や、近代美術館にも毎年撮影に行っています。

さて、今回僕は個展の作品の撮影に当たり、1つ特別なお願いをしました。
「黒バックでいきましょう」
黒バックとは、撮影するときの後ろの色を黒で撮るという事です。
通常ですと、グレーバックで撮影する事が多く、図録で見慣れている作品写真もほとんどがグレーだと思います。

黒バックで撮影するのはいくつかリスクがあります。
まず、作品が黒いのに後ろも黒いと、漆黒の魅力をなくしてしまいかねない。
この問題に苦労するのは僕ではなくて、カメラマンの中嶋さんです。
何十年もグレーバックで撮影してきて、その道のトッププロなのですが、この難しい依頼に応えてくれました。
ライティングの位置を何度も変更して、黒に差が出る撮影を行ってくれました。さすがです。

もう1つ懸念している事が、黒バックで撮影すると作品が古くさく見えてしまうのでは、という懸念。
これはやってみないとわからない事ですが、黒バックで撮影すると、かなり重い印象になる事があります。
高級感とか重厚感というプジティブなイメージになれば良いですが、暗い、古いイメージになる危険性もあります。
僕としては、想い通りの写真にしあがり、自分の作品イメージがそのまま写真になった気がしました。

この黒バックで撮影した作品群がどう見えてくるか楽しみです。

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2015年
蒔絵飾箱
「Zipangu」箱の身内側

全体写真はFaceBookのページにアップしています。
よかったらリンクから見に行って下さい。

Urushi-Yasuhiro Asai