短大時代の恩師
僕は高校時代に漆芸と出会い
その後の進路で迷わず漆芸をより深く学べる学校を選びました。
少しでも早く作家デビューしたかったので
短期大学で漆が学べると知って
高岡短期大学へ進みました。
高校時代の進路選択等はわりとあっさりしていて
教授に誰がいるかなどはあまり考えていませんでした。
一番参考にしたのは卒業制作の好みでした。
各大学の卒業制作を見て
自分にとっては高岡短期大学の卒業生の制作が一番気に入っていました。
短期大学なので入学したときから先攻が選択できました。
一年時からずっと漆を学びます。
卒業制作に入る頃に担当の教授について制作にあたります。
僕がお世話になったのが林暁先生でした。
林先生は日本伝統工芸展に作品出品をされていて
作品は知っていましたが、塗りの造形美については在学中に
正直理解できませんでした。
漆芸の加飾に魅せられていたので
卒業制作は蒔絵と決めていましたが
担当教授の希望を林先生にして、調書を出したのは
林先生が抜群に蒔絵がうまい事を知っていたからです。
蒔絵の授業は林先生が担当してくれていましたし
芸大の卒業制作とその後数年、蒔絵で作品発表をしていたのを知っていました。
卒業制作に入るとより先生と話す事が多くなりますが
言っていることがよくわかりませんでした。
とても抽象的に聞こえて
実際何をすれば良いのかわからなかったのです。
でも、先生の言っていた言葉にはとても印象的な言葉が多くて
しばらく経って理解できるものがたくさんありました。
絶対的な美は存在する
昨日の自分を愛すな
迷ったら美しい方を選べ
学生時代は毛の生えて無い雄ライオンみたいだ
これらの言葉は今でもとてもよく覚えています。
当時はよくわからなかったものもありますが
今、作家活動をしてみて理解できる事も増えてきました。
学生時代はだいたい好き嫌いで作品の善し悪しを判断するので
絶対的な美の存在については懐疑的でした。
何度、図案の提案を出しても跳ね返されるので
先生の好みに合わないから否定されているのだと思っていました
しばらくして美というものは何かが少しずつわかってきました
絶対的な美意識はあって、そしてそれは創造できることを知りました。
その感覚が本当に正しいのかは、これからの作品にかかっていますが
10年以上続けてやっとわかる事が増えてきました。
先生の言葉を理解できるつもりになっても
これから制作を続ける中で新しい形の理解となるかもしれません。
問いかけに対する答えは変化してゆくと思います。
今は教授と学生ではなく
こうして作家として先生と会って話ができることがとても嬉しいです。