不便な工芸品を目指すこと

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こんにちは漆芸作家の浅井康宏です。
今日は「不便さ」と「工芸」について僕が考えていることを書きます。


まず前提として僕たちが生きている現代の日本は
ものが十分にあって、便利に生きるための場所や道具、インフラは
どのような経済史状況の人でも割と均等に整った社会だといえます。

そんな僕たちの世界観の中での「工芸」のあり方に僕は
違和感を感じ続けてきました。

そもそも工芸は必要なのでしょうか。
「大切な伝統文化を守る」とか「日本の文化が失われるのは間違っている」と思う人は多いと思います。
僕もある部分ではそう思います。
だけど、守らないといけない部分って本当は何なのでしょうか。

「技術?」「意匠?」「スタイル?」
そう言った諸々、複数の問題が重なっているのですが、
肝心な「これが残ることで得られるメリットとは」という
プラスの要素がない工芸は衰退するしかないのかもしれない。

もっと簡単に言うと
「どれだけ夢を共有できるのか」
と言う物作りの根本が抜けているように思うのです。




つまり今の伝統工芸って
どこかで「守ってゆかなければならない天然記念物」みたいに思われている。
「あと、つがいがひと組になってしまいました」みたいな。

そうやって守られても、当然現代を自由に生き抜くことはできません。

そこで、
工芸の未来を作るには
ものの溢れた時代にあって自由に生き続けてゆくために
利便性を否定することにあるように思います。


常々思うのは興味のある人とない人がいて
興味のない人を変えるのは時間とお金がかかりすぎる上に空振りとなるということ。

食洗機で使える漆器
フォークでも傷つかない漆器
便利な道具になろうとするより
「丁寧な生き方」を提案できる道具である方が
誰かの心に届く夢になるのではないでしょうか。