守ること、展開すること。

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先日Twitterにアップしたツイートに多くの反応をいただきました。

このツイートの内容は、日頃僕が考えている制作姿勢であり、
今後の工芸全体に対する思いをまとめたものです。


ふと忘れそうになるのですが、
伝統的な物って、必ずその時代の最先端だったものなんです。
例えば、僕の仕事である蒔絵はおよそ1200年の歴史があるのですが、
当時の人が初めてできたてホヤホヤの蒔絵表現を目にした時
「なんだこれ!?めっちゃぴかぴかしててかっこいいじゃん」と思ったはずです。
そして、それから1200年の時を経て蒔絵は多様に展開して現在に伝わってきてくれています。

それは、確実に各時代の工夫や発明、そして時代が持つ雰囲気を捉えた当時の職人の
「かっこいい表現」への挑戦の歴史なんですよね。



時代の雰囲気について具体的に言うと、
平安時代から鎌倉時代へ変わると、雅な金蒔絵からより大胆な意匠感覚へと移ってゆきます。
つまり以前の社会体制から生まれた意匠感覚を引き継ぎつつ、
新たな武家社会が持つ時代感を捉えた最先端の蒔絵が生まれてくるわけです。


僕たちの時代にはどのような蒔絵表現が最適なのか、
それは時代のふるいにかけられた100年後に答えが出ていると思うけど、
どの時代でもそうであったように、絶対的な「今」が作品からにじみ出てこその
伝統工芸だと思っています。

高度な手わざを継承しつつ、現代的なアプローチを続ければ、
必ず今の時代の傑作が生まれることを信じて、作ってゆきます。

機会がありましたら、実際に作品を見ていただけたら嬉しいです。
僕の作品は立体なので、立体の美しさや素材のキラメキにふれていただけると思います。