ああ、この人は天才なんだな。

ひょっとしたら、天才と凡人はほんの些細な違いで立ち位置をわけているのかもしれません。
僕が「ああ、この人は天才なんだな」と思うのは、
自分が好きで社会的評価につながることに気づいている人です。
大多数の人は、それに気づくのに時間がかかってしまいます。
大まかに絵が好き、スポーツが好き、などそれくらいには自分を理解できますが、
その中でも絵ならば、人物や風景や、などなど分かれていって、
その先の先あたりにある、ほんとうに個人的な「好き」に気づいている人がたまにいるのです。
自分基準の価値観とでも言うものでしょうか。それが天才。

普通、自分のことなのに、それがなかなかわかりません。
僕が失敗を続けるのは、単純に自分の「好き」がうまく理解できないからです。
漆を18年続けて、何となくわかってきたものがあります。やっとです。

さて、自分の中に深く入ってゆくと
実は自分は、今やっていることが実は好きではないと気づいてしまうことがあります。
漆で例えると、蒔絵の仕事はやっていて楽しいけど、
螺鈿は楽しくないかも。。。
塗りってきついな。。(これは例です)
とか、
野球だと、ヒットはたくさん打てる体つきだけど
ホームランは無理だな。
内野守備は好きだけど、外野はキツいな、とか。

これらの特性を、キャリアの前半で気づければ最高です。
ただし、最初に言ったように、社会的評価がともなう「好き」でなければなりません。
天才型の人は「好き」と「社会的評価」のすり合せが自然にできてしまいます。
しかし、普通は一定の努力で「好き」と「社会的評価」をすりあわせてゆきます。

好きな事のレベルを最大化させるように努めたり
より深く自分の内部に入っていって、さらに深い自分を発見すること。
すごく抽象的で、美術っぽい事言ってるようでイヤなので、少し具体的に言うと
僕はきっと蒔絵のぼかし効果が好きだったんです。

スクリーンショット 2016-05-17 20.27.31
(画像 文化庁月報より)
松田権六は僕のスーパースターの一人なのですが、この作品の玉すだれの根元、うっすら消えてゆくような蒔絵表現がされています。
こういうぼかしが好きだったんです。
でも、最初は、なんでこの作品が好きなのかわからないんですよ。

同じ松田権六でも、このような荘厳な蒔絵も好きなんです。

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普通に見ていると、この作品たちが好きなだけなのですが、細かく分解すると、きっと部分にひかれているんですよね。
上の作品らな「透ける」「ぼかし」といったキーワードがハマる。
下の作品は「多素材」「荘厳」「幾何学」「連続」と言ったキーワード。
そういったキーワードを自分の作品に取り込むならどういうアプローチがあるだろうか?
こう言う順序で、自分の中で腑に落ちる作品を想像してゆくのです。

でも!これらのアプローチって、ぜんぜん自然ではないし、上手く統一できないんですよね。
なので、普通にやっていると、矛盾だらけの作品になってしまって、見てて苦しくなってしまいます。
足したりひいたりしながら作ってゆくのが、自分の内部に入ってゆく事かなと思うんです。
ちなみに上手くいった作品はこれです。↓

1.文化庁長官賞)浅井康宏 のコピー
(これは幾何学とぼかしがうまくいった作品です。)

いきなりヒットを飛ばす天才型のアーティストって、自分の「好き」を見つける作業がとても上手い。
きっと、すごく努力しているのでしょうが、見ててすごく鮮やかなんです。

小島有香子さんとか
http://toyama-glassartists.com/member/yukako-kojima/

若杉聖子さん
http://seikowakasugi.com

田島大輔さん
http://tarsansan.web.fc2.com

本当に天才だなーと思います。
ただただ憧れます。