不況時代の作家

僕たちの世代は好景気というのを知りません。
不況の中から生まれてきた作家というのは、ある意味とても強いのではないかと思います。
お金もアートも流通が鈍い中で育ち、活動しているので
「これくらいでなんとかなる」という甘い部分があると一瞬で消えていくことを知っています。

厳しい時代に生まれたことは確かだけど
バブルを知らないというのは良い面もあります。
それは、必要以上の絶望がないことです。
良い時期を知らないので、時代のせいにすることや
環境のせいにすることができません。
厳しいというのが前提にあるため、活動を多様化させたり
とにかく工夫して生き抜いてゆきます。

これからは権威があればなんとかなるという時代ではなくなります。
公募展の出品者が年々減っているのもそのためだと思います。
僕たちやその下の世代の作家にとって、美術業界は「夢のある業界」ではありません。

だけど、僕たちは美術を続けています。
逆境であっても「夢のある業界」を見ていないぶん
夢を作れる希望みたいなのを感じます。