作家とは何か

美大とか芸大の現役学生や卒業生の多くは
気持ちの差こそあれ、作家というものが気になっているはず。

僕は制作活動で生活をしていて
多分自分のことを「作家」と言っても間違えはないです。
で、この作家という職業の実態はどのようなものか
実はとても地味で地に足をつけた活動なのです。
わかりやすく例えるなら「社長」です。
スティーブ・ジョブズとかジェフベゾスみたいなカリスマ性のある社長業ではなく
個人的な事業の小さな、小さな「社長」です。

この社長業にはたくさんの、本当にたくさんのこまごまとした仕事があります。
営業や会計、仕入れ、納品。。。。
数えればきりがない社会と自社を繋げる為の仕事を大方一人でこなします。
でも、このようなクリエイティブではない仕事をこなしてでも作りたい強烈な動機
「自らのエゴを表現して、世界と繋がりたい」という言葉にしにくい気持ちに突き動かされています。

つまり、「作家業」とは「社長業」に似ていて
「作品・表現」は「商品・サービス」です。
今、僕が高校生の時に描いていた「作家」とは少し違う自分がいます。
早い段階で作家は社会との繋がりが重要であると気がついたので
そこから過去の作家の作品以外の側面を考えるようになりました。

世の中にはたくさんの会社があるように
作家としてのスタンスも多様です。
学校教育は一様ですが、そこを出ると無限の可能性
いや、広大な説明書のないリアルな人生が待っています。

今の僕に学校教育をはじめ、教育と美術における具体的な提案はありませんが
「作家」しか生まない教育なら、それは間違っています。
上記のように、作家はいわゆる社長業です。
社会に社長があふれていないように、世の中には社長気質とそうでない人がいます。
例えば、漆の業界でいうと
チームを指揮して数を作るプロデューサータイプの人がいれば
その素材に魅了されて、作業だけしたい人もいます。

それぞれの気質に合った働き方や、
素材との向き合い方があります。
全てのニーズに適した教育なんて存在しませんが、
弟子制度が崩壊している現在において、選べる進路が狭くなってきているように感じるのです。

役割分担を明確にし、作品のパフォーマンスを最大化にすることこそ漆の未来だと信じています。