漆は日々美しくなってゆく

漆の魅力の1つに透けがあります。
実は漆という素材は、固まってからも変化を続けます。
まず固まった直後というのは、多少ゴム質なしっとりとした塗膜を形成しています。
それが数ヶ月、数年してくるとより硬質になってゆき、カリッとしたかたい塗膜になります。

漆器としての使用感にはあまり変わらないとおもいますが、作業をしていると数年寝かした塗膜は硬くて研ぎの仕事に時間がかかります。

次に色の変化があり、これは特にわかりやすいです。
黒い漆器では変化をなかなか感じられませんが、朱の漆器は漆の透明度が上がり顔料の発色が良くなります。
また、蒔絵の作品なんかも透けによって奥に沈んだ金の発色が良くなります。

引っ越ししていたら昔の写真が出て来たので
ご紹介。

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この写真の蝉の蒔絵、羽根部分を見比べて下さい。
左が蒔絵した直後、学生時代なので12年くらい前、右が現在です。
見てもらうと、右の羽根が随分と明るい金色に変化しているのがわかります。
この部分は梨地という蒔絵技法で、
金粉の上に透けの良い漆が何層か塗り重ねてあります。
漆の飴色から金が覗く技法なので、漆の質が出やすい技法とも言えますね。

毎日のように使う道具なので意識していませんでしたが10年でここまで明るくなっていたとはおもいませんでした。
作り手の僕からしても漆という素材に日々感動。