漆植栽で1番重要なこと

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文化財修復が原則的に日本産を使うことになり
それまで冷遇されてきた日本産漆の需要が拡大しました。
それまで国内使用における国産漆の使用比率が2%〜3%だったのですが、
昨年は5%になったようです。
これは朗報ですが、漆の全体使用量が減ったこともあります。ただ、国内の生産量は増えています。


さて、そもそも漆とはなんでしょう?
このブログの読者さんはご存知の方が多いと思いますが、
僕たちが制作に使用している漆とは「漆の木」から得られる樹液です。

樹液なので樹木を育てる必要があって、
樹液を得られるまでに10年から15年ほどかかります。
その樹木の幹を傷つけて漆液を1滴ずつ集めてゆきます。


漆の木は山に勝手に生えている山の木というイメージがあるかと思いますが、
実は典型的な里の木です。
人間が植えて手をかけなければ育ちません。

父と一緒に16年前から漆栽培を始めて現在およそ200本の漆が鳥取に植わっています。
しかし、200本全てが順調に育っているわけではありません。
実は10年以上育てても幹が全く太くならないものもあります。

僕たちが育てている漆は西日本を中心に根を分けた分根法で増やしたものです。
その産地によって成長度合いが大きく違います。
葉の形や幹の様子から全く違うので「これ、本当に同じ種類なの?」と感じるくらいです。


漆の栽培は今後さらに必要になってきます。
そこで、大規模な植栽を行う場合、複数の産地のものを植えるのが必要だと考えています。
必要条件として最も大切なのは成長速度です。

土地と親木の性質の相性もありますが、
育たないと漆が採取できないので、どの品種が育ちがいいかわからない場合複数種植えなければなりません。
次に重要なのは採取量です、葉の少ない木、幹の細い木は漆液の採取も少ないので土地の広さに対しての不利になります。
漆の質はその後です。

漆芸作家としては
○乾きが早い
○透けが良い
というのが扱いやすいですが、
精製や複数混ぜることで性質を調整できるので
植栽と制作を行っている立場から、
成長が早いことと採取量が多いことを第一に考えて植栽地が広がってゆくことを望んでいます。

もし漆の木にご興味がある方いらっしゃいましたらぜひ鳥取の漆の木を見にきてください。