97%中国産頼りの日本の漆業界について

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こんにちは漆芸作家(シツゲイサッカ)の浅井康宏です。
今日は先日多くの方にご意見いただいた日本産漆について書きます。


プロローグ
現状日本の漆使用量の97パーセントは中国産頼りです。
しかし、数年前までは98パーセント中国に頼っていたというデータだったので、
1パーセントでも回復したことになります。

ツイッター上で多く寄せられた疑問は2つ
○品質はどう違うの?
○価格はどれくらい違うの?


1,品質の違いについて
品質については、中国産と日本産の差はあまりありません。
実際に化学分析してみても極端な差は出ないはずです。(今回は科学的なデータの掲載はしません)

作り手の感覚からすると、
日本産は湿度を与えることにより硬化する漆の特性をコントロールしやすい側面があります。
これは、日本産漆が採取時期によって、特徴を持っているからです。

初漆=乾きが早いが透けが悪い
盛漆=乾きは程よく透けが良い
末漆=乾きが遅く、透けが悪い

上記の特徴を生かしてそれぞれ、絵漆、塗り用の漆、下地と使い分けることができます。
たぶん輸入された漆は全てのシーズンのブレンドなので、平均的なパフォーマンスを見せてくれます。
日本産は産地や採取時期を選んで使える分、上級者向けであり、
扱いが難しい側面があります。

※ツイッターで中国産は日本産漆より紫外線に弱いという情報をいただきました。
これについてはソースを確認し、また漆屋さんにデータをいただきながら正しい情報をいずれアップできればと思います。
今回は明言を避けます。


2,価格の違いについて
価格の違いについては、日本産が中国産の5〜8倍であると思います。
最近は自家製の漆を使っているため、相場がわかりませんが、だいたい上記の範囲でしょう。
日本産、中国産ともに年々価格が上がっています。
将来的には中国産の漆も高騰することが予想できますね。


上記のように、あまり特徴を打ち出せていないが価格が高いというのが現状で、
長い間、国産漆は苦労してきました。
採取法が原始的で、採取総量を増やせないのが問題で、
機械的に生産量を増やしコストを抑えることができれば、
将来中国産の漆の値上げも考えれば、国産漆の使用量が回復することも可能なはずです。


最後に
文化庁が平成30年より国宝・重要文化財建造物の保存修理に用いる漆を原則的に国産を使うように決定しました。
これによって、それまで余っていた日本産漆が突然足りなくなりました。
しかし、漆の生産までには長い年月がかかります。

首里城の消失も含め国産漆への関心が高まっている今、
明日のための植栽は急務であると感じます。

漆に関心を持ってくれる方が一人でも増えると嬉しいです。