日本を好きですか?
愛国心なんて今の時代しっくりこないかもしれないけど、今の時代にこそ必要な言葉だと思います。
同年代から「もう、この国に希望は持てない」とか「日本が嫌いだから海外に住みたい」「政治なんて変わらないから選挙に行かない」
などと聞くと、とても寂しくなります。
僕はというと、学生時代あまり日本のことが好きではなかったように思います。
逆にアメリカにすごく憧れていました。
科学や技術、エンターテイメントのレベルの高さには憧れを持っていました。もちろん美術も。
日本美術史上、明治維新後は急速に美術の西洋化を進めましたが、ことごとく失敗しています。
西洋コンプレックスの塊のような油絵を描いてみたり、思想の無い抽象画を迷いながら描いてきた。
でも、実際、海外で評価を集めるのは浮世絵だったり、超絶技巧の工芸作品だったり。
日本の美術は西洋に追いつこうとして、中途半端な思想のまま現代まで来てしまいました。
明治の前は江戸時代ですから、鎖国のために日本美術史はかなりガラパゴス化していました。
もっと言えば、島国として独立していたため美術においても長い時間をかけてガラパゴス化しながら進化してきました。まさに原始の形を残しながら生きてきた日本美術。
明治になって、西洋列強に追いつけ追い越せという機運が高まると、このガラパゴス化しきった、日本美術が恥ずかしくてたまらない。
だから一生懸命海外の美術を学ぼうと国をあげて頑張った結果。西洋にかぶれて、外国から見たら「中途半端な油絵はいらねーよ。代わりにこの包み紙を飾ろう!」(江戸時代の浮世絵は工芸品輸出の際の梱包材として使われていました。今で言うエアキャップのような感じ)という感じで当時の最先端日本美術は無視され続けました。
近年は、日本の村上隆さんや奈良美智さんといったアーティストが世界の第一線で活躍しています。
これは本当にすごい事で、100年ぶりに世界の美術史が日本人に振り向いてくれた快挙だと思いました。ものすごい感動です。
ではなぜ、日本人の美術が世界で戦えるようになったのか。
僕はこう思います。
日本人として戦っているから。
日本美術の可愛いや二次元的な要素ってすごくオリジナリティがあって美しかったんです。
一生懸命捨てようとしたガラパゴスジャパン美術を海外は求めていたのに、日本人は一生懸命それを否定し続けてきた。
とうぜん、世界のアートの文脈とガラパゴスジャパン美術の文脈をしっかりと把握して作業する必要がありますが、
必要なのは、日本人のアイデンティティだったんだと思います。
(アートシーンについての考察は専門の書籍に任せます。)
どんなに海外に憧れても、僕は日本人です。
外国語を話せるようになっても、どこからどう見ても日本人です。
世界で渡り合うには、最高のストーリーを考えて、日本人としてそのストーリーを生きる事だと思います。
たぶんどの分野でも外国かぶれした日本人より、極めて高い専門性や思想をもつ日本人のほうが面白いと思ってもらえます。
「日本が嫌いだからはやく海外に逃げたい」ときくと「難民か!」とツッコミたくなります。
世界第三位のGDPの日本からの裕福な精神的難民って、相手国も困る。
日本をよく見つめたら、この国はなかなかすごい。
僕は漆というレンズを通して日本を見ています、縄文時代から同じ漆という素材を全く同じ方法で使い続けているって信じられません。
この国がその間、安定し続けていたわけではないんですよ。戦乱や自然災害を何度も通り越して、なお約一万年前と同じ漆の作品を大切にできる文化があるんです。
直近の政治やメディアが気に食わないという前に、自分が生まれた国の事をもっと感じ取ってほしい。
文化や美術というレンズで見つめたら、日本は輝いています。
政治に反感を持ったり、自由な思想をもってもいいと思う。けど、その根本には愛国心がなければならないんです。