「漆」=「焼物」じゃないよ!
初めてお会いする方に職業をきかれたとき
「漆芸作家です」
「しつげいさっか?」
「はい。漆です」
という流れになることが多い。
そのあとに、よく
「ああ、焼物ね!!!!」
といわれます。
これ本当に多くて、多くの人の頭の中にはその時
轆轤を回して壺を作っているイメージが浮かんでいるのだと思います。
僕はこの業界にどっぷりはまってしまっているので
「漆」=「焼物」になる感覚がわかりません。
なんとなく漆のイメージは幼い子をから持っていたし
それと陶磁器との違いは理解していたような気がします。多分興味があったから。
でも、これは間違ってしまう人が悪いのではなくて
単に知らない世界というだけのことです。
例えば、僕にサッカーのことを聞いたら
多分これくらい間違ったことを言ってしまいそうです。
フォワードとキーパーくらいはわかるけど、
ボランチとか右サイドバックとか言われても
正直わからない。
ラグビーとかアメフトとか、全くルールもわからないスポーツも多いです。
しかし、ふんわりとでもルールを把握したら
それなりに観戦ができるし、それを楽しめるような気もします。
そして、美術や工芸に関しても
知識なしでも楽しめるのは同じだと思います。
ふらっと「伝統工芸展」なんか見ても楽しいと思うし、
近代美術館工芸館の企画展などなんの知識もなしで見ても、
何かしらの感動があるような気がします。
ただし、難易度が高い分野もあります。
お茶道具系の展示や現代美術でも難解なものは
視覚だけでは楽しめないものも多いです。
茶道は形式美であったり、
現代美術は文脈であったり、前後関係や歴史を知っていないと
視覚から入る情報だけでは楽しめないようになっています。
真っ黒でいびつな茶碗や
トイレの便器を鑑賞して
「うむ、これは素晴らしい」と唸れる小学生はまずいません。
さて、僕は
「焼物やってるんですね!」という方にも僕の作品を見ていただきたいと思います。
今のところ作品には僕の解釈での文脈や美術史の系譜を織り込んでいますが、
一番大切にしているのは、美しさと感動です。
「キレイ」と言ってもらえる蒔絵作品を作りたいんです。
2017年1月11日から池袋西武で
第34回日本伝統漆芸展が始まります。
僕の作品も陳列しておりますのでお時間がございましたらお運びください。
https://www.sogo-seibu.jp/ikebukuro/kakutensublist/?article_seq=215394#prettyPhoto
「漆」「蒔絵」のことをもっと知ってもらえると嬉しいです。