構図に感情を足してやる その4
僕なりの構図の考え方の続きです。
よく「美は細部にやどる」と言いますが
これこそが感情の導入だと思っています。
細部まで詳細に見たくなるような作品って
何らかの興味がある作品なわけで、見ずにはいられないということだと思います。
そこに人それぞれの美的な感情をいだくわけです。
先に書いた構図の距離感の最終地点
10センチの構図(その1参照)での作者と観覧者の感情の交換が
つまり美術の意味の一つであり
構図を考える大きな理由なのではないかと思います。
だからと言って
全ての人が、一定のシンボルや造形や構図に反応するわけでありません。
猫に反応する人がいれば
黄色に反応する人もいるかもしれません。
人の感情とは実に様々で
作者の意図通りになる部分など
かなり限定的でしょう。
作家によってはがっちり
下図、小下図、大下図
など、入念に構図を練る人もいれば、
感覚的にビシッと
描きあげてしまう作家もいるでしょう。
漫画家の浦沢直樹さんがあるインタビューで
「すごく複雑なことを簡単に表すこと」
こそが現代の表現だと言っていました。
時代の背景や、自分の作風
感情などものすごくたくさんの情報を
一つの作品に込めて作るのだけど、
最終的には「すごく複雑なことを簡単に表す」必要があります。
自分が思い描く感情を見る人と共有し
誰かにとってなくてはならない作品を作らなければならない。
僕はある時から
「構図に感情の要素を足す」ことの重要性に気づき
作中で実行してきたつもりです。
ただこうして書いて見ても
うまく説明できていないし、
複雑な感情を上手くシンプルに作品化できた時
「これは腑に落ちる作品だな」
と、感じることができるのです。