浅井家漆の真価 真面目で一生懸命な漆

じわじわと真価を発揮し始める鳥取の自家製漆
実は埼玉にいるときは、使いやすい漆ではありませんでした。
室瀬先生(東京にお住まい)にお渡しして感想を聞いても、
「初漆の乾きはいいのに、盛りは少し遅いね。どうしてだろう」との感想。
関東の冬に使うには、コツと熟練がいる漆でした。

内心
「13年育ててきて、やっと採取できた漆の質が、、、、やっぱり鳥取に漆を植えるのは無謀だったのか。。。」
という、焦りと残念な気持ちがありました。
漆を植えてみても、漆の質を知るにはやはり10年以上の年月がかかるわけで
その結果が悪かったとなると、どうにも残念です。

しかし、不思議なことに
輪島の先生からの感想は良好
いやむしろ大絶賛のような感じ。
いつもは、漆を数種類混ぜて使う先生が
結果的に鳥取漆のみを上塗りに使ってくださり
「乾きが真からくるし、若い木なのに塗り肌のキメが非常に細くていいね」
と言っていただいた。
(乾きが真から来るというのは、ニュアンス的なものなのだけど
つまり、表面からではなく塗膜の中からしっかり乾くような感じ、
具体的にいうと、漆って乾いてすぐの時は、表面は乾いているのに
中が若干ゴム質な感じの時があり、鳥取漆に関しては
しっかり中まで均等に乾いているという感じの感想です。)

さて、これだけ褒めていただいても埼玉では苦戦していた浅井家の漆が
京都の夏にはとても調子が良いのです。

そして、真価を見せてくれました!
僕の仕事は金や貝を貼り付けることが多くて
何千パーツ、何万パーツ貼っていると、一定数外れて
貼り直しする必要があったのです。

割合的に1パーセントくらいでしょう。
しかし、数が多いから1パーセントといっても膨大な量になるわけです。

今作っている作品パーツ数が多分4000〜5000くらいだと思うんだけど、
剥がれたパーツ数 個!
1パーセントではありません。一つパーツが剥がれただけなのです!

京都に来て少し感じていましたが、
浅井家の漆の接着力は今まで使って来たどんな漆より強いです。
贔屓目ではなく、これだけの圧倒的な結果を出してくれました。

真面目で一生懸命そんな性格の漆でした。