漆芸の二つの基軸

特に漆の場合、作品の幅を持たせようとした時に、作品の性質がガラリと変わってしまうアプローチになってしまうことが多いんです。
これは、先にも書いたように、漆という材料が食器として優秀すぎるからなんです。
結果的に、全く違う基軸の作品を作ってしまう場合が多いんです。
でも、実はそれがとても危険で、現代漆芸苦境の原因だと思っています。

荒っぽくいうと、
ベンツと軽自動車は別の会場で売りましょう。
ベンツは軽自動車を作ってはダメです。
というわかりやすい話です。

なぜ今、作品の性質のことを書いているかというと
身近な人に「実用品を作っては?」と言われることがとても多いからなんです。
で、すごく作りたいんですよ。
身近な人に喜んでもらいたいですからね。

でも、割と早い段階で、実用的な漆器をやめたんです。
それは活動の一貫性が保てないからです。
その決断が正しかったかどうかの答えは10年後くらいに出ているでしょうか。