美術で食ってゆくのが難しい理由
いつの時代も「美術は食えない」と言われています。
実際に美術だけで生活してゆくことが難しいのは身をもって感じてきました。
(ただ、全然不可能じゃありません!食えるし、そういう人を増やすためにブログ書いてます)
ではなぜ難しいのでしょうか。
理由は複雑で、時代性とか、そもそも作品のクオリティの問題がありますが、
今はクオリティが高い作品を作っているのに「食えない」理由を考えてゆきます。
◆美術業界も資本主義の尺図
美術にも市場というものがあります、つまり夢のある業界ですが、ビジネスとしての側面があります。
物とお金と人が動くので、どうしても避けて通ることができません。
ビジネスの市場には80対20の法則というものがあります。
パレートの法則とも呼ばれる法則で、例えば
商品の売上の8割は、全商品銘柄のうちの2割で生み出している。
売上の8割は、全従業員のうちの2割で生み出している。
(出典 wikipedia)
引用のように、少数が多くのものを生み出す構図。
つまり、極めて不平等な状況であるということを表しています。
美術の業界も売れる人と、そうでない人の差がありますよね。
そして、売れる人はより高額になり、そして売れ続ける。このような構図は80対20の法則で説明ができます。
◆ビジネスとしての難易度
美術をビジネスとして考えた時の難易度はどうでしょう。
実はビジネスには難易度があって、効率的な事業とそうでないものがあります。
残念ながら美術は難易度が高い分野といえます。
ビジネスの難易度の条件
・小資本
・無在庫
・高利益率
・ストック性
・成長産業
上記がビジネスの良い条件です。美術を実際にビジネスに当てはめると
◯資本について。
美大に行って、工房を構えて、などなど、資本のかかる分野ですよね。ただ、紙と鉛筆だけあればいい表現もある。
◯在庫について。
物を動かす仕事なので、在庫は必要です。在庫のいらないビジネスは例えば、電子書籍とかウェブサービスは在庫ゼロですね。
◯利益率
作家の前半戦の利益率はかなり低く設定されています。売れても次の材料費になるかならないかの自転車操業が現状だったりします。
◯ストック性
ストック性とは、例えば著書が何作もある場合、そのキャリアは残ります。つまりストック性があります。
1つのコンテンツ(作品)が継続して利益を生むストック性でいえば、小説とか画集も少しはストック性があり、
賞歴などのキャリアも後の作品発表に影響するのである意味ストック性があると思っています。
◯成長産業
どの分野の美術に関わっているかが大きいですね。
現代アートだったり、工芸だと竹工芸はまさに成長産業です。
この分野で長期的に発表することは他の分野より条件がいい気がします。
他の分野だと産業を成長させるところから始める必要があるから、もう少し助走期間が長くなります。
漆工芸は成長産業ではないので、乗る波を作るところから始めなくてはなりません。
以上のように
美術をビジネスと考えた時、難易度の条件として高い分野といえます。
したがって成功までに時間がかかるし、成功確率が低くなるのも仕方がありません。
ただ、その難しさを克服するために時間をかけることができるなら挑戦する価値があります。
キャリアがストックされやすい分野でもあるので、実績を積めばそれだけ長期的に活動できます。
また、何人も人を雇ってスタートするプロジェクトやサービスでもないので、何億円も借金して事業をする必要もありません。
つまり、資本は低くはないけど、莫大ではありません。
長期戦と考えて、腰を据えて作品のクオリティを上げることができれば
時間を味方にできるのが美術です。
短期的な評価に惑わされず、淡々と毎日、仕事するのが鍵ですね。