売れ続ける作家の条件

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「売れ続ける作家の条件って何かありますか?」
百貨店の美術画廊担当者にそういう質問をしてみました。
「そうですね、1つあげるとしたら、変わり続けることですね」


美術の世界で長く生き続けるのはなかなか難しく、
間違いなく10年後には市場の景色は大きく変わっています。
新しい作家が生まれ、ある時期売れていた作家が消えているなんてのはよくあることです。

でも、その中でも活躍し続ける作家もいる。
消えてゆく人、生き残る人の違いは何なのか。
売り手の意見を聞いてみたくなったのです。

「変わり続けること」の後にこう続きました。
「作家特有の印象は残しつつ、以前の個展とはやはり違うと思わせてくれる作家は売れ続けますね」
つまり、全体を通してその人らしさがあり、なおかつ前回と違う挑戦があるということ。
それがないと、「お客様からしても、これも持ってるし、これも持ってる。じゃあ、一番小さいこれをいただきます」
というように、コレクションの幅を持たせられなくなるという。



最近は40代を見据えた作家活動を意識していて、
長期的に成長し続けられる作家として、どのように活動するか考えています。
「作品の印象を大切にしながら変わり続ける」というのはまさに大切にしていることです。
例えば、村上春樹さんの小説は、毎回のように世界観が変化しているのに、
不思議と読後感は「村上春樹を読んだ」という充実感があります。
音楽でも息の長いバンドにはそのような感覚があったりします。

美術作家にもやはり、そういうものが必要で、
ドキドキするような切れ味を毎回更新する必要があります。

それと、作家活動を新人時代、中堅、円熟期
という感じに20年スパンで区切るなら、それぞれに移行期があります。
若手新人時代は応援したいと思ってくれるコレクターさんと一緒に成長することができますが、
中堅作家や円熟期の作家に応援というのは少し違ってきます。
ある部分で、権威や知名度が作品流通の重要な基準になります。
人間国宝に「頑張ってね!応援してるからこの作品かうよ!」とはなりませんからね。

僕はこれから若手から中堅へと移行してゆきます。
そのために色々な挑戦をしてゆこうと思っていて、
その1つは海外へのアプローチです。
漆芸はまだ評価を上げる要素をたくさん秘めていると思っていて、
それを最大化させるための活動を行ってゆきます。

世界に向けた活動の中にも
浅井康宏らしさを構築できて、常に変化と前進を両立できる美意識を育てるのは可能だと思っています。

ここにとどまって安定した作品を作るのは心地いいし、
安心感があるけど、そういう制作活動に明日はないのです。
全然売れなかった時期が長いから、現状を当たり前だと思わないし、
何度でも立ち上がる気持ちがあるので、
もっともっと遠くに行きたくてたまらないんですよね。