美術は基本が大切 

美術で生きてゆく場合の基本は何でしょうか。
デッサン力?
色彩感覚?
センス?
美意識?

すべて大切だと思いますが
これらは、あってもいい程度の基本能力ですね。
というのは、多くの成功している美術家に会ってきて、
皆さんが、これらの条件を高い水準で習得しているわけではないという事に気づいたからです。
「僕は絵が描けない」
はっきり言う人もいます。

では、美術において基本とは何かというと
考え方ではないかと思っています。
何度か書いていますが、美術は他者とのコミュニケーションよって成り立ちます。
だから、受け入れられなくても良いとか
売れなくても良いという考え方は、基本を無視しています。

だって、作品が売れないとどうやって次の作品作るのさ?
美術を商業主義に絡ませると、嫌われるかもしれませんが
美術家の仕事は作品を作る事である以上、作り続けなければなりません。

別にこれは、作品価格を高くするとか
売れやすいものをたくさん作るという事ではなく、
前提として、売れなくても良い、理解されないのが普通と思わない事です。
学生時代って複雑で手数の多い作品が評価されたりします。
そういう作品ってプロ好みというのか、ドロドロべたべたしてるんですよね。
でも、表現が洗練されていると題材やテーマがドロドロしていても
清潔感がある作品になります。
この清潔感は、
他者とのコミュニケーションという基本がしっかりしていないと生まれてきません。

考え方がひねくれていると、作品にそれが現れます。
そして本人が気づいていなくても
ばればれになっているんです。
毎日おかしな素振りを続けていても
おかしなスイングが身に付くだけで、
すぐ行き詰まります。

美術の基本は思考です。
誰かのためや、何かのために作品を作っても良いでしょう。
その中で自己表現をすれば良いだけです。

自分勝手な自己表現の鬼と化して作品作ってると
自分も他の人もつらいですからね。

かく言う僕も長年わけのわからない思考で制作してました。
美術を長期的に続けたい人は、さっさと人の世の中にある美術を追究した方が良いです。
ときに変則的な作家や、作品はありますが、それが美術史です。

ちなみに
茶道具って、どんなに古い道具でも
基本は清潔感だそうです。当たり前ですがそれでお茶を飲むわけですから。
茶道はお茶を介したコミュニケーションなので、清潔さは基本なのでしょうね。
岡倉天心の茶の本に書いてあったと思います。

他者や社会を意識したときに生まれる作品の清潔感は魅力的です。