ガッシャーン!!「あ、お皿を割っちゃった」
食器を割ったらショックですか?
僕は「まあいいか」とすぐ切り替えます。というか、ちょっとラッキーとも思うのです。
なぜかと言うと漆芸家は「金継ぎ」(きんつぎ)ができるからです。
金継ぎとは、割れた陶器を漆で接着し、そこへ蒔絵をほどこす技法です。
日本にはポピュラーな修理方法で、古い茶陶の名品にも見られます。
この金継ぎはたんなる修復痕としては見られることはなく、新しい景色として楽しまれます。
このあたり日本人的なものを慈しむ精神と、柔軟さを感じます。
手順としては、生漆に小麦粉を混ぜ込んだ麦漆という接着力の強い漆で割れた器物を接着します。
破片が足りない場合は、ペースト状の刻苧漆やサビ漆で欠損箇所を修復してゆきます。
さらに漆を塗った後、金や銀で蒔絵をします。
ただ単に目立たず直すより、蒔絵してヒビや割れを強調する修理方法というのが面白いところですが
見慣れてゆくと、何とも味わい深いのが金継ぎでなおされた陶器の良いところでしょう。
自分でなおしてしまうので我が家には次第にまともな状態の器物が無くなって。
学生時代からつかわれているような古参の食器だらけになってきました。
自分でなおすと愛情もことさら強まり、傷すら可愛くなってきます。
強度の面でいうと、実使用に全く影響がないです。
大振りの皿がまっ二つに割れたものに、山盛りおかずを盛って、片一方をもっても修理箇所はびくともしません。
乾いた後の漆の強度に驚かされます。
この金継ぎですが、習い事としても人気があって各地で教室が開催されています。
漆の入門にはぴったりかもしれません。漆材料店には「金継セット」が用意されています。割れてしまった思い出の器の修理をご自分でおこなってみるのも楽しいですよ。