生きている実感

生きている実感ってどんなときに感じますか?

僕は長いあいだそれを感じられなかったように思います。

小学校、中学校と学校が好きではなかったので
家にいる事が多かったのです。
テレビが面白くなくて
ネットも無い時代なのですごく退屈でした。
中学になってからエレキギターを始めて、それは一生懸命に練習しました。
でも、心の中にぽっかりと空洞があって、それは埋まりませんでした。

漆を始めてからは少し変わりました。
「これで何とかなるかもしれない」と思ったので青春のすべてをかけてきました。
でも、心のどこかに満たされないものがありました。

足りなかったものがなんなのか、今はわかるような気がします。
愛されている実感社会での自分の居場所だったんです。

愛されている実感は、家族からの愛情では気づかない事があるのです。
当たり前すぎて気づかなかったり。だから、家族がいても孤独だったりします。
大人になって誰かに愛される事で、自分にも愛される資格があるのだと気づいたりします。
自分が愛している人に愛される事って、よく考えたらすごい事です。
そうしてはじめてに家族の愛情に気づいたりします。

社会での自分の居場所は僕の場合漆を通して見つけました。
作品を通して美を共有できる事が、いつしか自分の仕事になって、
それに気がついて、やっと人間らしくなりました。
自分の仕事で誰かに感謝されるとことが仕事のやりがいの本質なんだと思います。

たった二つの実感で人間は生きてゆけるものかもしれません。
けっきょくのところ、自分一人では生きている実感なんて持てなくて
誰かに必要とされたり、必要とする事でしか生きてゆけないのでしょう。