採算を度外視した制作こそ作家の特権かもしれない。

作品制作は時に採算を度外視しないとならない時があります。
なぜかと言うと、自分の作品の市場価値があって
その上限を急に上げることができないからです。

その結果
材料の高騰の影響や制作時間の量を
価格に加味できる部分というのはとても小さいのです。

そうするとどうなるかと言うと
つまり、価格上限は一定にしつつ
制作は加速しているので、材料代と手間はかかるので
採算が合わなくなります。

でも、それこそが作家としての特権だと思うのです。
漆を商売と捉えると、採算が合わないことをすることができませんが
漆を人生だと考えると、たくさんの冒険ができます。
それに、極限まで生活を切り詰めると、ある種の狂気が生まれます。
良いか悪いかは置いといて、切羽詰まった一生懸命さが作品に宿ります。
「これが、作家だけでやってゆく最後の作品になるだろうな」と思って作った作品もあります。
実際に本当に売れなくて、ウェブ関係の職業訓練を受けるための願書を出してから出品した作品もありました。

(結果的にウェブの知識は役に立っています。
就活には失敗し続けて、結局、作家しかなくて続けることができました。)

極限の状況を耐えてでも、漆を続けようとした自分を少しほめてやりたい気もします。
漆の技術を会得するには長い時間と、お金がかかります。
くらいトンネルの中をとぼとぼと歩くような心細さがあります。

その中で、勝手に思い立った作品制作に、あてもなくお金をつぎ込んで
ただ一心に作品を完成させようとする行為って、ある意味幸せです。
バカみたいに作品を作るために生きる。
誰にもお勧めできないけど、この採算を度外視して最高の作品を作る生活こそ作家の特権のように思います。

今は独立して漆だけで食べていますが、
個展の予定が大筋で決まりそうだった去年の年末から、作品をそろえるために
販売をやめています。
展覧会に出品しても否売で出しています。
よって収入がない状態が続いて
人件費を残して、生活費がどんどん削られています。
惨めなあのころの生活が近づいてきました。
懐かしい。

いつか、貧乏自慢を懐かしんで笑えれば良いのですが、
今は制作に命をかける時のようです。
個展まで一年を切っている。すごいプレッシャー。