初心を忘れない方法

初心って忘れてしまいがちです。
自分のキャリアが長くなればなるほどに、初心のキラキラした感じが無くなっていって。
石のように固まって。苔が生えてくるような。
まあ、それが全部悪いとは思いませんが、最近、初心を忘れないことがどれだけ大切か考えることがありました。

これは身近なエピソードです。
最近展覧会で身近な知り合いがデビューしました。
そこで「この展覧会に自分の作品があるなんて夢のようです」ということを語っていました。
それが心からでてきた本心なのがわかります。
なぜなら、僕自身もそう思って、初入選のときとても感動したのを思い出したからです。
そういうことが立て続けにありました。

仕事は慣れてくると、上手くなるしスピードがあがります。
熟練になるほど早く美しい物が作れるようになります。
同時に、ある種の要領のために極端な仕事や挑戦的な内容を避ける性質も育ってきます。
伝統的な技術を伝えるために「守る物と展開するもの」を常に意識していなければならないように、
個人の仕事、一作の作品の中にも守りと展開は必要になってきます。
常に美術史は今の時代を生きる自分自身による最高のアプローチを望んでいます。
なので、凝り固まった石を転がして均衡を崩すような作品を作る必要があります。

新しくデビューした若い作家のあのキラキラした感じが僕に大きな感動をくれました。
僕自身、全体から見たらはなたれ小僧みたいな存在ですが、それでもいろいろなことを忘れかけていたのです。

同時に先輩方の助言を真摯に受けとめることができなくなっていたような気がします。
早く走ろうとするあまり、周りが見えなくなって、とにかく自分の信じる方向へ走っている。
走っている間にいろいろな物を見落としてきたのかなと。

きっとこれからも新しいことがたくさん待っていて
その度に初心者として、心を躍らせて、キラキラと挑戦してゆく自分がいると思いますが、
いままでやってきたことと継続してゆくことにも、初心を忘れてはならないと思ったのです。

で、初心を忘れない一番の方法は
人に会って話をすることだなと思いました。
少し前の自分と同じ気持ちを持った後輩と話すこと
これから目指す道の先にいる先輩と話すこと
話を聞かせてもらうことが
自分にとっていつまでも大切なことだと思いました。