作品の事 蒔絵飾箱「Zipangu」
2015年制作
蒔絵飾箱「Zipangu」
第62回に本伝統工芸展出品作
マルコポーロの「東方見聞録」に登場した日本は「Zipangu」と書かれています。
つまり世界が日本を発見したとき、この国は「黄金の国ジパング」と名付けられました。
ではなぜ黄金の国に見えたのか。
それは卓越した金箔製造技術を持っていた日本人は建築物まで金で加飾する事ができ、
そして、蒔絵技術によって室内装飾のほとんどを金色に輝かせる事ができたからでしょう。
その当時の日本人は間違いなく世界有数の金属加工技術を持つ民族だった事は疑いの余地がありません。
現在では、「東方見聞録」は創作であり、史実と関係ないという意見が大半を占めているようです。
実はマルコポーロの存在自体も疑われており、口述筆記で記された最初の「東方見聞録」は失われています。ヨーロッパ全土で制作された写本はそれぞれの作者の創作がかなり含まれているようなので、原本の真偽も疑われています。
ただ、何の根拠もなく東方見聞録のジパング部分が書かれたとも思えないので、中国から伝わった日本の情報を元に創作されたものと思われます。
この作品に「Zipangu」と名付けたのは
世界が日本を発見した当時のように
今度は日本人が日本を発見する必要があるのではないかと思ったからです。
世界美術史を学べば学ぶほど、日本の特異美術様式には世界がうらやむほどの文化的な背景があると感じたんです。
漆を日本人は縄文時代前期、少なくとも9000年前から使いこなしているし、
世界で唯一の蒔絵技法もその原型は奈良時代に見る事ができるんです。
現在の高度な情報化社会になってなお、この縄文時代から続いている「漆芸」という芸術分野を何一つ変る事なく伝え続けているというのは、驚くべき事です。
自分の関わっている芸術分野を褒めちぎりたいわけではなく、
たまたま魅力を感じて仕事にした「漆芸」の「蒔絵技法」が世界に与えたインパクトを美術史を学ぶ中で追体験したんです。
日本の美術はもっと評価されても良いです。
とくに、日本人がもっと日本美術を評価しても良いのではないかと思うのです。
12世紀に世界が日本を発見したときに名付けた「Zipangu」
今は日本が日本を発見してほしいと思い、作品に「Zipangu」とつけました。
あと実は僕自身が「世界から発見されたい!」という想いも強く持って作りました。
金色に輝く美しい日本を造形化したかったんです。