大人になるという事

大人になるとはどういう事なのでしょうか。
今33歳になっても、高校生のときの自分が見つめていた、大人というイメージと自分は違います。
もっとずっと「そのまま」な自分がいて、いい意味でも悪い意味でも自分はずっと変っていない。

ただ、1つだけ変った事もあります。
そしてそれが、大人になるという事だったのではないかと思うのです。
それは今自分の周りで起こっている事の全てに責任を持つという事です。
自分の周りとは一体何かと言うと
言葉のまま、全てです。

生まれた瞬間の人間って、他の動物に比べてとても無力です。
歩けないのはもちろん、話す事も食べる事も排泄の対処すらできません。
そんな中、周りの人間に守られて、少しずつ大人になってゆきます。
だから子供のうちは自分の周りで起きている事に何一つ責任を持てません。
人生の選択権がすごく限られていて、同時に誰かの責任にする事ができます。
教育、親、先生、社会のせい。

大人になるという事は、全ての責任を自分で取るという事です。
それは、未来への責任と同時に、過去の責任もとらなければならない事だと思うのです。
教育、親、先生、社会が与えた過去の責任を自分でとらなければなりません。
たくさんの苦しい事はあったけど、その過去の記憶は今の自分と繋がっているようで別物です。
同じ出来事があっても、そこで立ち止まってしまう人と、それをバネに進む事ができる人がいます。
起こった出来事は同じでも、その意味付けは自分で決める事ができます。

誰かのせいにして、ずっと布団の中でうずくまっているのは簡単だけど、
出来事の捉え方には自分に責任があります。
過去のつらい出来事も、1日も早く自分の中で清算して歩み始める事ができる力こそ、
生きてゆく独立した大人の生き方ではないでしょうか。

震災や戦争のニュースで心を痛めます。
もちろん震災がおこったことは自分の責任ではありません。
しかし、その後の自分の感情には責任があります。

僕が漆芸を続けてゆく上で、一切いいわけをしないのは
責任の全が自分にあると思っているからです。
結果的に失敗してしまったとき、どうしようもなく悔しくなります。
だけど、成功した時、良い結果が得られた時。
成功の原因も自分がおこした行動の結果である事を忘れていません。
大人になって、全ての事に責任を取るという事は
辛い今を生き抜くと同時に、全ての幸福も受け取る事だと思うのです。

それが、大人になるという事ではないでしょうか。