希少素材のジレンマ

漆芸作品には
鼈甲や象牙を用いる技法があります
歴史は古く
正倉院御物にはきわめて精巧な作品として
現在でも残っています。
少なくとも1000年以上の歴史があり
人類はその美しさに惹かれて
それらの素材を使用してきた事になります。

現在、鼈甲と象牙は
ワシントン条約により守られていますので
輸出入は禁止されております。
社会的にもそういった希少動物を守る動きが強く
関心を持っている人が多いと思います。

僕もある一定の種が人間の欲望のためだけに
絶滅してしまうのはどうしても避けたいと思っています。

それと同時に
工芸技術として
鼈甲技術や象牙の技術が
この世から消滅してしまう事も
寂しい事だと思うのです。

工芸技術自体が
多くの犠牲のもとに成り立っています
たいていは貴重な自然からの恵みを
人間の手によって造形し
新しい美意識へと変えてゆきます。

それも人間だけが成せる技なので
大切にしたいのです。
問題は人間の欲望に終わりが無いことと
希少になればなるほど
それが欲しくなるところにあるのでしょうか。