漆芸家的に「磨き」と「研ぎ」は全然違うんですよ!

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よく研ぎをしているところを見学に来られると、
「あ、今磨きの作業なのですね」と言われます。
漆芸家としては
「いえ、これは研ぎです」と返します。

一般的な「研ぎ」とは何をさすのでしょうか。
もしかすると、刃物の研磨のような刃物研ぎのイメージが強いのかもしれませんね。
漆の業界での「研ぎ」とは
下地の整形
あとは
塗面を平滑にする作業の事を「研ぎ」といいます。
木工芸等では、サンドペーパーを使った木地調整や
すり漆後の調整も磨きと呼ばれる事がありますが、
漆芸的にはサンドペーパーを使った研磨は全て「研ぎ」の作業と言います。



では、「磨き」とは何か。
これは最終的に漆の表面を鏡面加工にする時のみ「磨き」の作業をします。
今まではサンドペーパー、砥石、炭等を使用していた「研ぎ」対して
「磨き」はシカの角を焼いて得る「角粉」(現在では工業製品の磨き粉を代用しています。)をしようします。
角粉を指につけて少量の油で、漆器面を磨いてゆきます。
この指と角粉を使う工程のみを「磨き」と言って、漆芸家としてはある種神聖な作業となるわけです。

なので他の工程で
「磨きですね」と言われると
「いや違います。研ぎです!」とこだわってしまうのです。

この磨きの作業は、作品制作の時間的な割合から言うとだいたい1%にも満たないくらいの時間です。
ちなみに研ぎは80%くらいの時間をかけています。
磨きは最後の漆黒を生み出す作業で、作品の出来を左右する楽しみな工程なのです。