「漆が好きだから」

浅井康宏自己紹介はこちら
作品紹介はこちら
外部サイトギャラリージャパンでも作品がご覧になれます https://galleryjapan.com/locale/ja_JP/artist/9325/
CAMPFIREコミュニティはこちら


僕と両親が漆の植栽をはじめて今年で13年目となります。
祖父母の代まで20世紀梨の専業農家だったこと
梨の木が老木になってきたこと
色々な条件が揃って、漆の木を植栽するという経緯があったのですが
その当時、僕と両親がどのような決断のもと、植栽を始めたか振り返ってみると。。

今から13年前なので、僕が21歳の時です。
短大の研究過程を終えて室瀬先生の工房で修行を始めた頃。
漆をはじめたのは高校時代なので漆芸歴は6年くらいでしょう。

この時点で、僕は漆を人生の仕事にしようと考えていました。
もっと言えば、高校生の時には「作家になる!」という将来の希望を持っていたので
今後に繋がる活動ならどんなことでも行う決心があったのだと思います。

その頃から材料に対するこだわりは強くて
短大時代から経年変化のある素材は一切使っていませんでした。
蒔絵の素材として銀は経年変化で黒くなってゆくので、
金粉とプラチナで卒業制作を作りました。
色漆の発色を試して、日本産の漆の魅力を感じていました。

ただ、
材料のこだわりがイコール漆の植栽につながったのかというと
少し違うような気がします。

どの分野でも言えることですが、いくら高額な材料や道具でも
作るよりは買う方が安い場合が多くて、手間を考えたら
買えばいいものを10年以上かけて育てようというのですから。


きっとあの頃はよくわかっていなかったことだけど
今はっきり言えることは
植栽に関して、僕が行わなければならなかった理由はたくさんあっても
一番の理由、そして最も説得力ある理由は
漆が好きだったからという単純なものだったのではないでしょうか。
それを家族で育てたかったのです。
20代の僕は両親にこう言ったのだと思います
「お父さんうちに漆を植えてくれないかな。鳥取で育てた漆を使って作品作りたいんだ」

現在、3箇所に分けて約200本の漆の木が植わっています。
植栽当初は苗木と雑草の戦いで、夏場に何度も草刈りをしました。
木が大きくなっても突然立ち枯れしてしまうことがあり、その木を見つめると辛い気持ちになります。
13年間色々あったけど、漆の木から漆液が採れるようになって
初個展の作品に育てた漆を使えるようになりました。

16830740_1243795122374320_3804215632934880472_n

先日母が
「色々あったけど、植えといてよかったね」と言っていました。
僕は関東で制作していて、漆の世話はあまりできないけど、
「家族で漆を育ててこれて幸せだな」と思います。

漆が好きという気持ちが滲み出て
形になりはじめたんだな。