京都でしたいことが、また一つ見つかった。

「なんで京都に来たの?」とよく聞かれますが
「縁がございまして」としか答えていませんでした。
実際のところは、
縁があったというのと、個展を終えて自分の中で環境を変えてみたかった部分も大きかったです。
個展前後というのは精神的にも肉体的にも極限まで追い込まれていて
終わった後に、心機一転あたらしい土地で制作をしてみたいと考えていました。

理由は単純だけど、これという絶対的な理由はありません。
実のところ、小さな理由が集まって、僕は「京都へゆこう」と決めたのです。

ただ、来てみると意識は完全に変わりました。
京都という場所の潜在的な力を感じています。
それは寺社仏閣がたくさんある、という理由ではなく
短い時間だけど出会ってきたに力を感じたのです。


特にターニングポイントとなったのは
先日の作業台の漆塗装イベントで出会った学生さんたちの好奇心というか、熱意みたいなもの。
今まで、僕は埼玉で仕事をしておりましたが
もっとも苦労していたのは、チーム作りでした。
なぜ制作にチームを必要としたのかは別の機会に書くとして

とにかく、ピンポイントの人材しか集めることができなかったのです。
副業的に土日だけ来てもらうことしかできなかったし、チーム制作を始めた31歳の時なので
後輩といっても関東にほとんどいないし
先輩に手伝ってもらったり、なかなか理想の状態を作ることができませんでした。
結局ピンポイントで手伝ってもらうと
間隔が空くから、毎回作業手順をリセットしたり説明したり
はっきりいって、赤字になることも多かったです。
それで、その赤字をかぶっても、そのスタッフが将来的に工房に残ることはないし
行き止まり感に苦しんでいたのです。


京都には高校のコースも含めると
本格的に漆を教えている教育機関が三校あります。
しかし、卒業生の受け皿と考えると
産地としての機能は現在の京都にはないのではないでしょうか。
漆器といって「京漆器」はなかなか頭に浮かんで来ません。

だから、卒業生は全国に散らばってしまうか、やめてしまう人が大半でしょう。
つまり、今までのように頑張ってスカウトして県外来てもらうという流れから
自然な流れで卒業後の進路としてうちの工房で働いてくれる人がいたらなと思うのです。

そういう流れの中で京都で漆をする理由が自然と生まれてくるのではないかと期待ができました。