漆を採り終えた木を伐採できない

漆の木は10年以上育てて
1シーズンで樹液を採取しきってしまい、伐採されます。

セミみたいに、じっくり育った後
一夏で命を終えるような感覚です。

さて、我が家では昨年から13年育てて来た漆の採取が始まりました。
木のサイズとしては高さは7mくらい幹周辺が75cmといった感じで
なかなか立派な木に成長して、植樹されている場所も見事な林といった感じです。

一般的に漆の採取は「殺し搔き」といってシーズンで採れるだけとって伐採してしまうのが主流です。
もともとうちもその方針で進めていたのですが、
父親がどうも木を伐採したがらないのです。


実は今年初めて父の漆搔きに同行したのですが(二日間だけだけど。)
なんとなく、伐採できない理由がわかったような気がします。
理由は
木が可愛すぎるから
漆バカもここまで来てしまうと狂気じみて来ますが、
10年以上育ててくると、ある種の感情移入は確実にあります。
根っこから育てて来た頼りない棒切れをここまで大きくした充実感
そして、夏の間中傷を入れてその度に樹液を出してくれた木への思い。
たった2日ながら、漆かきに立ち会うと特別な感情が生まれます。

そして伐採できない理由がもう一つ。
日陰がなくなる
これは実務的なことですが、林が形成されていると、木陰が生まれて
夏場でも清々しいです。暑い中でもシートを敷いて昼寝がしたいくらい
気持ちい林になっています。
そこから木を伐採してしまうと一気に炎天下となって、
来年の漆かきが苦しいものになってしまうのです。

というわけで、搔き終わった木もしばらくはそのままにして近くに
新しい木を植樹し、そして新しい木の成長を待って更新してゆく林の作り方を進めてゆこうと思います。
漆の大産地では、このような方法をとることはないと思いますが、
我が家の漆畑はできるだけ、一本一本の木と一緒に育ってゆきたいと思いました。