美術とスタートアップ企業は似ている
ほとんどのアーティストは売れない時代を過ごします。
理由はいろいろありますが、アートを事業だと考えてみると答えや、対策が見えてきます。
まず、新規事業が成功する可能性がいかに低いか、
失敗する可能性がいかに高いのか。。。
新規事業やスタートアップの成功確率は極めて低く、米国の起業家養成型ベンチャーキャピタル「Yコンビネータ」のポール・グレアム氏によると、スタートアップの93パーセントが失敗する
(tech noteより引用)
新規株式会社が5年以内に倒産する可能性などのデータもたくさんウェブ上にあると思います。
結果からいうと、新規事業は80パーセント以上の確率で失敗するようです。
つまり、僕たち美術作家が「こういう未来を作りたい!」と思って作品制作をしている場合でも
その未来に対して賞賛が得られない可能性は大いにあるわけです。
残酷に言ってしまうと、美大を卒業した後、彼らをスタートアップの経営者だと捉えて
5年以上活動を続けることができる人材はほんの数パーセントだということです。
この現実の厳しさを知ってか知らずか、ここ何年も美大の男子学生は減り続けています。
「食えないスタートアップの美術を専攻するとヤバそう」という判断を10代の半ばで行なっている彼らは優秀です。
一部の天才を除いて、徐々に食える作家になるために、少なくとも約10年食えない時代を過ごすことが多く
僕自身もやっとたべれるようになったのは20代後半でした。
アートを事業と考えて、なぜこのようなことが起こるのか説明すると
作家=会社
作品=商品
無感情に置き換えてしまえば上記のようになりますが、
活動の最初期というのは、会社の知名度も信頼度も低く
商品の精度も低い状態なわけです。
そこから
商品を作り上げながら品質を上げてゆき
会社の知名度を上げてゆきます。
そのうちにギャラリーなり百貨店の美術画廊なり
信頼のある媒体の目に止まることとなります。
ここではギャラリーや美術画廊を仮に大手企業として置き換えます。
商品の質を高めることにより会社の信用が高まる。
そのうち大手企業と手を組むことができるようになる。
このあたりから、少しずつ一般的な知名度も上がってきます。
さて、スタートアップが大手と組んで仕事をするようになるまでの話をしましたが、
随分と時間がかかってしまいました。
1から自社製品を作りあげるのですから、当たり前です。
その間、製品を常にアップデートしたり、方向性を模索したり。。。まさに暗中模索を繰り返すわけです。
この時の心理状況を想像して見てください。
将来的に売れるかどうかわからないものを
赤字を垂れ流しながら作り続けている。
場合によっては応援してくれる人より、非難される場合が多くなるかもしれません。
それでも、続けてゆくことができるだろうか?
身の毛もよだつ話ですが、これがスタートアップの真実です。
30代になってみて、周辺を見渡すと、生き残った作家しかいない状況です。
彼らは優秀で、最後まで諦めなかった人たちです。
どんな状況であろうと休まず作り続けてきていたのを僕は見ていました。
一部の天才を除いたら、食えない時代を必ず通過します。
それは企業のスタートアップのように、成功率の低い試みです。
起業家の自伝を読むと、寝る時間を惜しんで、仕事に明け暮れる日々があり、
大きな挫折や失敗を乗り越えてきたことがわかります。
その先に明るい未来があると信じることができるなら、
また明日仕事部屋に入って次の作品を作り始めなければならないのです。