日本産漆と中国産漆

以前のように中国と日本の人件費の格差はなくなりつつあって、
むしろ日本の人件費の方が安い分野もたくさん出てきていることでしょう。
中国製が安くて、粗悪というイメージももう古くて、家電や工業製品で価値の高いものをたくさん生み出しています。


さて、漆においても中国産漆は毎年価格が上がっています。
人件費の問題で、これは必然なんです。
先にも述べたように日本における漆使用のパーセンテージは完全に中国頼りできています。
ということは、中国産の漆が高くなればなるほど、
日本の漆器製造業は苦しくなるわけです。

今の漆器のブランディングって「高価なものを手軽に」みたいな感じなので
原価が上がることは死活問題になってきますよね。


ではどうすればいいのでしょうか。
僕は日本産漆の復興が打開策のひとつだと思っています。

植樹を進める

漆の木は植樹から採取ができるまでに時間がかかるので
早めに手を打っておくのがいいのです。定期的に植樹が続けられる状況を作ることがまずは必要です。

採取方法の研究

もう一つは、採取方法の研究です。
漆の採取は現在でも、幹に傷をつけ、そこから流れてくる漆液を一滴ずつ集めるやり方で採取されます。
これって、道具は石から金属に変わっていますが、縄文時代の採取方法と同じなんですよ。
伝統的な技術ではありますが、10年以上育てた木から牛乳瓶一本ぶんしか取れない
採取方法を現代まで続けてよかったのでしょうか。
幹を傷つけることなく、効率的に漆の木の樹液を採取する方法は必ずあるはずです。


伝統工芸の世界で効率化を唱えるのはタブーかもしれませんが、
漆の木を長年育てている立場からすれば、
現状の採取方法は例えるならば、牛乳を得るために、毎シーズン殺しているようなものです。
長期的に安定した採取できる方法が研究されるべきでしょう。
「漆掻きの伝統技法が失われる」と言われるかもしれませんが、
手絞りで得られる牛乳も、機械で得られる牛乳も同じ味です。
それに、後継者がいない過酷な労働ならなお、開発の必要があると思えます。

上質な日本産漆が
現在より安く、
より多く安定的に国内需要に回せるために変わる時期にきています。