堤淺吉漆店さんに見学にいってきた
堤淺吉(つつみあさきち)漆店さんに見学&動画撮影にお邪魔してきました。
堤さんの漆を使い始めたのは、東京にいるとき。室瀬先生の工房で使っていたので、その時初めて使ったのが最初です。
使い心地がとても良く「ここの漆はなんか違うな」という印象で、自分の制作でも使い始めました。
具体的に何が違っていたかというと、
1、刷毛目が落ちやすい
漆は粘性が高いので、刷毛塗りした場合、刷毛目という塗り跡が残って固まります。それがとても心地よく落ちてくれます。
つまり、綺麗な塗膜が作れました。
2、透けがいい
透明度が高く、蒔絵の塗り込みをした時の金粉の輝きが、とてもよかった。
3、安定している
漆は天然の素材なので、採取された年によって個性が表れます。
しかし堤さんの漆を長期的に使って見た感想として、安定して高いパフォーマンスを示してくれます。
上記の特徴がなぜ得られていたのか、、その時はよくわからないまま使っていましたが、
堤さんの作業を丸二日ほど見学させていただいたことで、理解できたような気がします。
まず、仕事場の画像を何枚か貼ります。
漆を漉している様子。
採取した生漆には木屑など、不要なゴミが含まれているので、漉してゆきます。
ナヤシとクロメ
成分を均一にし、余分な水分を飛ばして塗料にしてゆきます。
熱をかけて水分を飛ばし、鉄分を入れることにより科学反応により、漆黒の漆に変化してゆきます。
二枚の写真でさらりと説明しましたが、この作業で丸二日かかっています。
さて、僕は漆屋さんの仕事とは、漆掻きさんから買った漆を
精製して桶やチューブに詰めるだけの小売業というイメージでした。皆さんはどうでしょう?
しかし、実際に作業を見ていると、毎日漆を精製しており、原材料を塗料にする仕事がメインで
小売ではなく製造であると感じました。
さらに驚いたのは、
漆は注文したら在庫を「はい、どうぞ」って渡されるのではないのです。
実は、注文が入ってから、気候や地域など細かい条件の中から最適なものを
合わせてその都度作ってくれていたのです。
これほんの一部ですが、これだけの漆の在庫から、注文が入ってから合わせて作ってくれています。
どういうことかというと
漆って、産地や季節によって特性が違います。
例えば、粘性だけとっても、漆自体が持っている粘性の特徴に加えて、精製でコントロールされた特性があります。
さらに経年で粘性は増してゆくので、膨大な在庫がストックされており、最適な調合で
「使いやすい」漆を個別に作ってくれていたのです。
上の写真でわかるように、今でも毎日漆のデータを取り続けて、より良い漆の調合へ日々努力されています。
僕が室瀬先生のところで初めて感じた堤さんの漆が持つ「何か」とは、
日々続けられた研究の賜物だったのです。
堤さんの漆を日々使えるだけでも、京都に来たかいがあるように思います。
ちなみに鳥取で採取された漆は堤さんに精製をお願いしています。
少量の精製に協力してくださり、さらに粘性など細かな注文に応えていただきとてもありがたいです。
今回は本当に勉強になった二日間。
そして、なんだか感動してしまいました。
堤淺吉漆店のHP↓
http://www.kourin-urushi.com
精製の工程が見られる動画もありますので、興味がある方はそちらもチェックして見てください。
"漆黒 / jet black" 堤淺吉漆店 from Naoki MIYASHITA/ Terminal81 Film on Vimeo.