僕が自分に給料を払えなかった理由

僕は作品制作を会社で作っています。

10年前に埼玉で会社を作って個人の制作を行ってきました。
なぜ会社を作る必要があったかについてはまた今度書こうと思います。
さて、僕は会社の社長なのですが、経営は火の車で苦しい期間が長かったです。
それでもここ数年は、特に2度目の個展後は少しその苦しい時期を脱することができました。

でも、自分自身には給料を払うことができませんでした。
理由は簡単で、制作費がかかりすぎて、自分にお金を払うことができなかったのです。
ここ数年は制作費が数千万円に上っており、その額を年間制作数で割ると小さい作品でも
100万円単位で作っていることになります。

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ただ自分に払えなかったのかというと、実は違っていて、
「優先順位を変更していた」というのが正確なところです。
何をしていたかというと、たとえば利益が出て、本当なら自分に支払うべきところを
加工機械を導入すること、最高級の材料を惜しみ無く購入し、自分を後回しにしていました。
これは、「将来どういうものが作りたいか」という目標の逆算で、
必要になるものは最高のものをできるだけ早く用意するように心がけていたのです。

こういう行動原理で動いていたので、実は僕の工房にある加工機械は卓上のものではなく工業レベルのものが揃っています。個人の制作というより研究機関や学校の設備に近いと思います。
・活動初期は書籍に投資
・漆の植樹を早めに始める
・材料は常に最高のものを使う
・加工機械は最新でハイスペックなもの
など、無理してでも漆と自分の未来に賭けていました
当初加工機械はオーバースペックだし、材料費を回収するだけの価値を生み出すことができませんでした。
だけど、良いものが作れるようになったこと、
今は必要な書籍と機械が揃ったことで自分の給料を支払うことができるようになったのでと思います。

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もちろん挑戦は常に続けて行くので、これから信じられないような投資が行われるだろうし、
その時はきつい状況になるかもしれません。だけど、これからも未来を信じて美を追求していればきっと形となってゆくと思っています。

追伸

厳しい状況の時でもスタッフの給料をわずかずつでも上げ続け、ボーナスを出してこれたことが経営者としての自分をレベルアップさせてくれたと思っています。
美術作家として、これからもスタッフ、家族を幸せにできるように励みます。
ひとまず、今年から自分にも給料を払えるようになってよかった。