僕は蒔絵に希望しか見いだせない

僕は蒔絵が好きなんです。
自分が次に作り出す作品をとても楽しみにしています。
自分の作品が大好きです。
完成が近くなると枕元に置いて一緒に眠るくらい好きなんです。

作業中に作品を褒めまくるのでスタッフに「どんだけ好きなの」とあきれられます。
同時に「そんだけ作品好きになれたら良いよね」と羨まれます。
作品って自分の想いを造形化したくてスタートするんですが、
いろいろな人の力を借りて制作されます。
図面をひいて木地師さんに木地を制作してもらい
それから、スタッフと協力して塗の工程を行ないます。
加飾は主に僕1人で行ないますが、パーツの下準備はみんなでします。
こうやって、作られる作品ってすごい雰囲気を纏ってゆきます。
1人で制作していた頃とはちがう、多くの人の想いが込められてゆくような感じなのでしょうか。

そして、作品が完成したら
「僕のとこに来てくれてありがとう」と思うんです。
この世界には、世界を構成している原子の数だけデザインが存在していると考えています。
もちろんそのほとんどは、つまらなかったり、誰にも見つけられていなかったりします。
作家は、まだ見つかっていない原子を自分なりの細かさの編み目の網でつかまえようとします。
一生懸命に網を振り回していると、必ず宝物のようなデザインを見つける事ができます。

このように幸せな毎日を送っているんですよ。

同業者での飲み会に行くと愚痴が出る事が多くて
絶望している人が多いんです。
「今の時代漆を理解してくれる人がすくない。。」
「漆は時間がかかるから高くて当たり前なのに。。」

正直、こういう絶望について僕は1ミリも理解できません。
以前は持っていたかもしれない「絶望」を今は全く思い出せない。

「ごめんけど、僕は蒔絵に希望しか見いだせないんだ。」
別に言葉には出さないけど、そっと自分の道を歩こうと思います。
そんな日は早く帰って仕事しよう♪