無国籍な美意識

以前にも書きましたが (過去記事「和風より無国籍感を求める理由」
僕の制作テーマに「無国籍な美意識」というのがあります。
実はこの無国籍な美意識に日本美の源流を感じていて
その根拠は正倉院宝物にあります。

正倉院の宝物は聖武天皇ゆかりの品が収められています。
当時シルクロードを渡ってきた品々は、とても国際色豊なんです。
仏教を支柱に、あらゆるプロジェクトが行われて
美意識も形作られてゆきます。

さて
奈良時代の「無国籍な美意識」を基準にして
「無国籍な状態こそ日本的だ」という思想のもと
自分の作品を作っていますが
当時と現代とでは重要な違いもあります。

それは何を媒体にして無国籍な状態であるかという事。
正倉院宝物は「仏教」という媒体のもと各国の美意識を集めています。
現代はどうかというと
僕の考える現代の無国籍な状態とは
「情報」そのものが媒体になっている状態。
そして、その状態が日本美を形作ると考えています。

僕の作品はよく
「日本的」とも「オリエンタル」「西洋的」とも言われますが
それは僕の考える「無国籍な美意識」が成功しているからだと思っています。

情報が共有されて
世界中がインターネットを介してフラットになってゆく時代
「日本美術とはこうである」と言う概念はなくなってゆくでしょう。
ただ、日本人としてのアイデンティティや僕個人としての表現が求められるときに
日本人としての混沌を「無国籍な状態」
個人としての感情を「生きることの切なさと、希望を」「王道の蒔絵」で表現したいと思うのです。