産業としての漆芸を考えて僕が出した答え

僕が学んだ高岡短期大学は
今は併合されて富山大学に変わっていますが、
その時に在籍していた学科名は「産業造形学科」の「漆工芸コース」でした
僕は、学生ながらにこの学科名が疑問でした
と言うのも、教えている内容はいたって芸術寄りで
一般的な「産業」のイメージとかけ離れていたからです。

僕としては、極めてハイレベルな漆芸技法が学ぶことができたこの方針に満足していましたが
学科名の「産業」が気になっていたのです。
だって、「産業造形学科」より「造形学科」の方が、芸術的でカッコいいじゃないですか?
授業の内容からも「産業」を感じさせるものはありませんでした。

担当教授の林先生に
「なんでうちの学校、産業造形学科なんですか?あまりにも産業とかけ離れている気がします」と聞いてみたところ、、、
「私の作品は売れています。こう言う産業の形もあるのです」と言われた。
すごいインパクトです。
確かに、ものが流通する形に決まった形なんてなくて
誰かが良いものを作って、誰かがそれを求めるならば、規模は関係なく「産業」と言えなくもないです。

この林先生の発言で
僕の中で「芸術活動」と「産業」がつながったわけですが
今でも意識して、実践しているつもりです。

そしてもう一つ
産業にとって重要なのは、市場参加者を増やすことだと思いました。

これは単にコレクターを増やすと言うのではなく
作り手を増やすことも意味しています。
僕がある時期から無理してでも工房制作をしてきたのは
作り手を増やすのも目的の一つでした。
割と本気で漆を学んだ人に漆を続けて欲しいんです。

理由はいろいろありますが
ある時期、青春をかけて学んだ漆を卒業を機会にやめてしまっては勿体無いし
日本文化にとっても機会損失です。
何より、後輩が続けられない環境ってのがどうしても嫌なのです。

一般的な給料よりは低いかもしれないけど(ごめんけど、大企業や公務員並みの給料は出せない)
スタッフにはお給料を正確に支払ってきたし、そのために自分はひどく貧しい思いをしてこなければならなかったけど
そこには僕が考える漆を中心とした正しい産業の考え方があるんです。