百貨店と美術
日本における美術発信の大きなウェイトを占めている百貨店。
特に工芸分野における、発信場所としては、規模、歴史の古さからも
工芸といえば百貨店というイメージを持っている人も多いと思います。
最近「百貨店の企画が多すぎるのではないか。」と思います。
現状として、各百貨店には、それぞれ美術画廊があり、展示スペースが少なくとも二箇所
多いところになると4とか5部屋ある百貨店もあります。
もちろん、百貨というだけあり、たくさんの物を並べるのは百貨店のあり方に沿うものですが、
時代の流れとともに変化する必要もあるように思います。
作家として企画が多すぎることの問題点を考えてみます。
◯展示が多いと期間が短くなる
展示が多いということは毎週展示替えとなります。
数カ所の場所を埋めるために、月に何度も展示替えを行うことになります。
通常、個展やグループ展などの展示は1週間となります。
その期間を長いと感じるか、短いと感じるかは人それぞれだけど、
土日を二度はさむことができるだけの期間が理想ではないでしょうか。
◯企画が薄まる
年間で膨大な数の展示を開催するために
それぞれの企画が薄まって見えることがあります。
各展示それぞれ同じだけの力を入れるのは難しいので、目玉企画とそうでないものの差が生まれてしまいます。
◯お客様に伝わりにくい
作家として一番懸念していることが、お客様に伝わりにくいことです。
例えば、案内にしても美術画廊のパンフレットが届くと、たくさんの情報が詰め込まれています。
限られた紙面なので、現状仕方ないけど、展示の密度を上げて作品情報を少しでも大きくしたらより見えやすくなるでしょう。
色々思うことはありますが、僕も百貨店からデビューさせてもらいました。
そして、これからも若手作家のデビューの場として百貨店があるなら、
たくさんの機会が用意されていることはいい事かもしれません。
たくさんの情報を提供する場所が、リアルからネットに移り変わる現在、
本当に良いものだけを厳選した場であるとか、人との繋がりがある心地よい場所としての
百貨店という未来を描いた時に、美を提供する場としても美術画廊には変化の余地があるように思います。
百貨店が美術を扱うというある種の文化。
人と物との関わりが急速に展開する中、作家と百貨店が提供できる美的体験をどこまで追求できるか。
2021年の個展では、できるだけその辺りも追求してゆきたいと思います。