最高の作品を作るためのサイクル

最高の作品を作り続けるためには一定のサイクルが必要です。
良くない作品を作ってしまう理由はたくさんありますが。
最高の作品を作る方法はこのサイクルの確立だけだと思っています。

僕が考える作品作りのサイクルを図にすると

2016-01-03 10.47.12

収入があり作品制作に多くのお金をかけることができる(収入)
より良い作品制作へ向かう(制作)
お客様に購入していただく(お客様)


 

このサイクルをくり返す事により
制作費の制限がどんどん上がってゆき
思考のリミッターがはずれて、今まで思いつく事もできなかったような
発想で物作りをする事ができるようになります。

お金があれば良いものを作れるわけではないけど
お金がなければ良いものは作れません。
なぜかと言うと、手持ちの材料や
制作費を気にしていると自然と
頭で制作を制限してしまうからです。

一点に5万円の制作費しかかけれない作品と
50万円かけてもいい作品の質は全く違ってきます。
低コストで良い作品を作る事は不可能ではないですが
僕にとってはかなり難しいです。

制限のない状態で最高のものを作ろうとする姿勢が
僕にとってはベストの状態です。

さて、最初のサイクルに戻って考えてみます。
無名の作家がこのサイクルを作って制作だけで生活と制作を
続けてゆく事は至難の業です。
ほぼ全ての作家がこのサイクルの反対のサイクルに入ってしまいます。

つまり。
売れない
お金がない。
制作費が減ってゆく=作品の質が低下する

この悪循環の中での制作には限りがあります。
生活が苦しいのはもちろん、精神的にもとてもつらいものがあります。
僕も何度もこの悪循環にはまりそうになりました。
端から見ていると、その悪循環の中に完全に入り込んでいる作家に見えたと思います。

ただ違った事は、
その悪循環から脱出するポイントを決めて
そのための行動をした事でした。

無名の作家の僕が
唯一できる行動とは
制作費を増加させる事でした。

売れてなくて
作品の質が高くない中で、制作費を上げ続けるのは勇気がいりました。
それに、家族にもとても迷惑をかけました。
漆に対して寛容だった父親の初めてストップをかけられました。
当然ながら売れてないので、父親にお金の援助をしてもらわなければならなかったからです。
それも、それまでになかったほどの金額で作品を作りたいと言いだしたからです。

その結果
自分の持っていたお金と、父に助けてもらった材料費をつぎ込んだ作品は
日本伝統工芸展で落選しました。

僕の作品の質を高めるためにとった行動は失敗に終わりました。
ただし、ある種の手応えと材料が残りました。
僕が悪循環から抜け出すために、そのときとれる唯一の行動は
最高の作品を作るためのサイクルの
「作品にお金をかける」部分でした
サイクルの残り二つの要素「より良い作品制作に向かう」「お客様に購入していただく」
については全く確証がありませんでした。それどころか大失敗しました。
落選して日の目を見なかったのですから作品としては失敗です。

ただし、質の向上にたいしての手応えはあったので
内容を充実させる事ができたら、作品が完成すると思いました。
残った材料と、前年の教訓を元に制作した作品は
伝統工芸展で「新人賞」を受賞しました。

悪循環を抜け出すのは本当に難しいです。
抜け出しても、より良い作品へのサイクルは加速して膨らみ続けます
制作費は信じられないような金額になってきます。

僕のサイクルが好循環を始めてから気がついたことは
作品の事を第一に考える事が正義であるという事です。
生きていると、自分の生活を良くしたいとか
おしゃれがしたいとか、いろいろな気持ちが生まれますが
そんなものを全て、後回しにして
「最高の作品を作るために生きる」生き方を続けなければならないという事です。
サイクルが好循環し始めると、収入の後に自己の欲求が生まれてきます。
それを無視して全力で制作費に送り込めば、少しだけ美術の核心に近づける気がします。

自分の人生は
最高の作品を作るためのサイクルを回し続けるための
手と頭です。
そこに自分の欲望は必要ないです。