天使の話
20代の頃
僕はお金がなくて、漆で生活ができなくて
焦っていました。
でもぜんぜん打開策が見いだせなくて
くすぶっていました。
いろいろなギャラリーを回って
たくさんのギャラリストや作家さんと話しました。
その中で聞いた天使の話をしようと思います。
ある漆芸作家の個展に伺ったときでした。(その作家さんは60代だったと思います。)
いろいろ技法の事を聞いて、少し打ち解けたときに
ふと、「若いときはどうやって食べていたんですか?」と聞いてみました。
その作家さんは
「どうやってたんだろう?よくわからないけど、何とかなるんだよ」
「具体的には何かないですか?」
「どうしてもだめなときには、天使が現れるんだよ」
!?
「天使ですか?」
「そう。天使、天からのつかいだと思った。」
「どんな感じでしたか?」
「ある日ね、どうしてもお金がないときだったんだけど、
突然、高齢の男性がうちにやってきて、たくさんあった在庫をびっくりするくらい大量に買っていってくれたんだよ。」
「お知り合いとかですか?」
「いや、全く知らない人だったんだけど、どうやら僕の事を調べて作品を買いにきてくれたみたいなんだよ」
「その人とはまだつながりがあるんですか?」
「それがさ、あまりに突然で、聞き忘れちゃったんだよ
びっくりしちゃって。でもあの人は天からの使いだったと思っているんだ」
「男性の天使だったんですね。」
僕が想像していた天使とはきっと風貌が違ったんだろうけど
天使はほんとうにいるんだと思いました。
自分の人生の中にも
たくさんのピンチがあったけど、その中で誰かや何かが助けてくれて
なんとかなってきているような気がします。
天使がどんな形をしているかはわからないけど、
頑張っていたら、姿を現してくれるかもしれません。