作家のリアル

僕のブログには、よくお金の話が出てきます。
それには理由があります。
漆とか美術とか芸術ってすごく夢があってすばらしい世界だと思うんです。
でも、作っているのは生身の人間で、日々努力や葛藤の中で制作を続けています。
どんなに大きな夢を持って、この世界に入ってきても、そこで生き抜けるのはほんの一握りで、大半の人はやめてゆきます。
続けてゆくにしても、作品制作だけで食っていくのは難しいと言われており
年を追うごとに、状況は厳しくなります。

僕も「漆では食えない」「売れるものを作れ」という言葉は何度となく聞かされてきました。
それらの助言は全て、身内や知り合いなど、理解や愛のある助言として僕に伝えられてきました。
つまり心配なのです。
心配の中心にはいつもお金のことがあり、
そのためにほぼ全ての美術家は苦しみます。

僕は一般家庭の出身なので、自転車操業を余儀なくされます。
順風満帆な作家生活を送っているように思われますが、
実は明日もわからないような、地をはうような生活をしています。
それでも、僕は芸術の世界で生き残っていたいので、力の限り這いつくばったり、しがみついたり
必死に毎日を送っています。

それでも「作品だけで生きてゆく」という目標を掲げて、それを実行してきました。
「作品制作だけでは食えない」と言われていましたが、どんな形でも作家になりたかったのです。
その結果、足りない物だらけでも、作家になった今、僕にしか見ることのできない風景があると思うんですよ。
いつも請求書に追い回されながら、それでも協力者や仲間に助けてもらって、純粋に美しい蒔絵の作品を作ろうとする
作家のリアルがブログで残せたらいいなと思います。

全然美術のイメージと外れるかもしれませんが、お金の話は生きている生身の作家のリアルなんですよね。